
イジワルな彼女。
第5章 巡-メグル-
唯さんと付き合えるだなんて、
さすがに僕はそんな身の程知らずじゃない。
元カノとも半年ももたなかったし…。
僕にとって、高嶺の花である唯さんと
どうにかなるなんて無理ゲーだ。
ただ、もう一度だけでいい。
もう一度だけ、僕は唯さんに逢いたい。
そして…
僕はそのまま眠りについた。
夜中に目を覚まし、
トイレに行こうと部屋を出ると
まだリビングの照明がついていた。
「起きた?
さっき声掛けたら、寝てたから
起こさなかったんだけど…」
風呂上がりの母親が、
ちょうど髪の毛を乾かし終えるところで
僕の方を振り向いて言った。
「あー、疲れて寝てた。
…メシ喰えなくてごめん」
綺麗に片付けられたダイニングテーブルを
横目に、僕はそう答える。
「明日、食べれそうなら食べてね」
そう言って母は、
ドライヤーのコードをくるくると束ねた。
「おやすみ」
「おやすみ」
寝室に入って行く母親の背中を
ぼーっと見送り、僕はトイレに向かった。
