
イジワルな彼女。
第4章 薫-カオル-
うつろな目でぼーっとしていた僕は、
一人の店員さんと目が合った。
僕は少ししてから、ハッとして
慌てて手元のスマホに目線を落とした。
すると店員の彼女は、
カツ カツと靴のヒールを
微かな音だが小気味よく鳴らしだす。
僕はそわそわしながら、
彼女の動向を下を向いたまま伺った。
音はどんどん近づいてくる。
僕の心臓の音と、
彼女のヒールの音。
この店には僕以外にも
お客さんがいるのに、周りの音は
一切耳に入らなかった。
そして、僕のテーブルの前で
その音は止まった。
