
イジワルな彼女。
第2章 歩-アユム-
「…」
「…」
しばらく彼女も僕も、無言だった。
どこまで歩くのか、
いつまでこのままなのか。
しびれを切らした僕は切り出した。
「…あの?」
「あ!ごめんなさい!」
彼女は目の前の大きな屋根がある
店の軒下に入ると、僕の手を離した。
「いきなりでびっくりしたよね」
そう言いながら、僕の濡れた腕を
彼女のハンカチで拭いてくれた。
「あ、僕は大丈夫なので」
恥ずかしかった僕は、
彼女にそれがバレないように
少しかっこつけて言い
彼女のハンカチを制止した。
「少し時間あるかな?」
彼女が僕の顔を覗きこみながら、
道路の反対側のカフェを指差した。
