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『untitled』

第7章 青春18きっぷ - story Ⅱ-

【二宮side】


陸上部に入るかもしれない、なんて
考えたこともなかった。

なんだかんだで相葉くんはウチの部にずっといてくれるって思ってたから。

もし、パソコンが出来なくったって櫻井先輩やみんながなんとかしてくれるだろうって。

だけど、もし、相葉くんが陸上部に入りたいって言ったら?

パソコンもろくに出来なくて、ただうるさいだけで。

『ニノちゃん』

部室は端っこだから校庭を見ることが出来ない。
各教室があるところまで走って自分のクラスの窓から外を見てみたけど相葉はいない。

「いない…」

1年の教室を一つず覗く。

C組、B組にもいない。

『ニノちゃん』

俺を呼ぶ相葉くんの声と笑うあの顔が頭の中で甦る。

一年A組の前。
相葉くんのクラス。
ドアを開けようとしたら中から物騒な音と声がして。

その声はどれも聞いたことがある。

丸の声もする。

また、俺のことを買い被っておかしな話をしてるんだろう。

そして、もう一人、威勢のいいのが…

最近、知った名前。

伊野尾。

相葉くんのファンクラブの副会長・伊野尾慧。

相葉くんの頬にキスをしてたのは、伊野尾だった。

それを見てから、なんとなく俺を見てるのかな?と思っていた伊野尾から視線が、冷たくて鋭いものだと感じるようになった。

部活以外で必ずと言っていいほど、相葉くんの隣にいるのは間違いなく伊野尾だった。

その伊野尾と丸の争うような声がする。

「失礼なのは貴様だ!どうせパソコンなんて真剣にやってないに決まってる」

教室から聞こえた言葉。

腹が立った。

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