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『untitled』

第7章 青春18きっぷ - story Ⅱ-

【二宮side】


「なぁ、ニノぉ~」

風間は毎日、俺の周りをウロウロしてくる。

聞くところによると風間の所属する陸上部は
たくさんの新入部員が入ったらしい。

中には中学ではそこそこ名前の知られてる奴も入ったとか、入ってないとか。

「ねぇ、相葉ちゃん、全然ダメでしょ?」

相葉くんと幼なじみだからと、相葉くんについて聞いてもないのにペラペラ喋ってくる。

実家は中華屋で兄弟がいて相葉も料理を最近やってる…とか。

俺はこの数日で相葉くんについて色んな事を知ってしまった。

「櫻井先輩がなぁ~」

櫻井先輩はなんで相葉くんの入部を引き留めるんだろう?

「そんなの、先輩に聞けよ」

「聞けたら、苦労しないよ」

相葉くんはやっとこ、パソコンを起動してネットくらいなら自分で見れるようになった。

パソコンを一人で起動出来たとき…
「ニノちゃーん!出来たよ!ニノちゃん、ありがとうね」

たいしたことじゃないのに、あんなに感動して、
俺に抱き付いて…

そう、そうなんだ。

相葉くんは俺を抱き枕かなんかと間違えてるんだろうか。

部活中、必ずと言っていいほど抱き締められる。

「…聞いてる?」

「あ?」

「だ、か、ら!相葉ちゃんにさ、陸上部すすめてよ!ニノだって迷惑だろ?」

迷惑だなんて…

予鈴のチャイムが鳴って風間はその言葉だけ残して
席に戻っていった。

迷惑だなんて…

思ってない。

本鈴が鳴って教室に入ってきたのは大野先生。

サンダルをペタペタと鳴らして入ってきて。

俺たちを見回して、
「テストする」

教室から不満の声が一気に広がって。

「抜き打ちだ!お前ら寝てばっかりだからな!ほら、筆記用具以外しまえ~」

なんで、相葉くんはウチの部に入ったんだろう。

俺のなにがいいんだろう。

ふと、教室の外に目をやると体育の授業中の相葉くんがいた。

クラスメイトの誰かが相葉くんの腕をとりその腕に自分の腕を絡めている。

内緒話でもしてるんだろうか、頭を寄せあって
何か話してる…え?

そいつは相葉くんの頬にキスをした。

相葉くんは頬に手をやり笑ってる。

胸がキュウと苦しくなって、ザワザワしてる。

今見た、相葉くんの姿が頭の中で何度も繰り返し再生される。

テストは散々だった。

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