テキストサイズ

『untitled』

第2章 青春18きっぷ

〈二宮side〉



「発表順に並べよ」

壇上の裏に発表者が集まる。

運動部はユニフォームに身を包み、
ボールを持っている人もいる。

そんなパフォーマンスなんてされたら、
ますます文化部の立場がない。

文化部はみんな制服で顔の系統が一緒。

その辺に関しては俺は系統は違うから
大丈夫だけど一番の問題は……


『情報処理部』の発表はまさかの最後。


だんだんと飽きてきて、
興味が薄れるのにその中でも最後。


誰が俺の話を聞くんだろう……


そう思ってはいても緊張はする。


まだ時間はあるし、トイレでも行こう。


櫻井先輩が作ってくれた原稿を読みながら歩く。


「あっ!すいません!」

トイレに入ろうと曲がった瞬間、誰かとぶつかった。


そして頬に何かがポタリと当たる。


「あっ!ごめんなさい!俺、ハンカチなくて!」

声の方に目をやると、
健康的に肌が日焼けして
髪の色素が落ち少し茶色くなった
いかにも漫画に出てくる爽やか青年。


そんな印象を感じつつ、
俺は濡れた頬を拭いながらトイレに入った。


「手拭けよ!」

さっきとは違う人の声。

「今のだよ!思い出した!二宮だ!二宮先輩!」


えっ……何で俺の名前を知ってるの?


理由はわからないけどもしかしたら……

なんてないよな。


完全に俺とは住む世界が違う人。


俺は便器に座り、再び原稿に目を落とした。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ