
『untitled』
第5章 赤いシクラメン
意を決して、エレベーターに乗り込んだ。
スマホを確認しても俺が送ったメッセージに読んだ形跡は見えなくて。
電話もコール音が鳴るだけで応答はしない。
頼む…
無事で…
エレベーターのボタンの前に立ち、上を見上げる。
階数表示版の数字が増えていく。
落ち着かなくてポケットに手を入れたら潤がいつも食べてるフリスクが入っていた。
いつの間に…
それを振ったらカシャカシャと音がした。
それを手のひらに出す。
1つ2つ3つ…口に放り込む。
仕事の合間にするキスの味
ツーンと鼻につくこの味
潤とするキスの味
もしかしたら、これから俺のすることは潤の俳優生命に関わることになるかもしれない。
潤はとても素直で。
『翔がやれって言うならやるよ』と、俺が取ってきた仕事に文句をつけたことは一度もない。
俺が見たい潤を
俺が欲しい潤を
今までやらせてきた。
実力と人気を手にしても俺らスタッフや共演者に横柄な態度をとることもない。
『翔がとってきた仕事だからね』と、俺のために
俳優 松本潤を演じてくれる。
それを手離さないといけなくなるかもしれない。
それも、俺のワガママで…
だけど、俺にはお前しかいない。
チーンとエレベーターが到着を知らせた。
「ふぅ」
一つ、息を吐いた。
足を一歩前に出す。
何度か訪れたこの場所。
ここに来るっていうことは、そういうことで。
なんとも照れ臭くて、素っ気なく接していたかも。
だけど、部屋に入れば恥ずかしいなんて、どの口が言ってんだというくらい乱されるんだ。
「1103号室は向こうか…」
スッと俺の目の前に現れたのは、スイート専用のバトラーで。
俺に頭を下げると先へと歩きだした。
着いてこいってことか?
足音一つ立てないその柔らかいバトラーの歩き方。
だんだんと近くなる1103号室。
ドクンドクンと焦る胸。
だけど、バトラーの足元を見てると心臓の鼓動に習って早足になりそうな俺に、落ち着いて、と言われてるような気がしてくる。
前を歩くバトラーの足が止まった。
右を向くと1103と書かれた部屋のドアが。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
スマホを確認しても俺が送ったメッセージに読んだ形跡は見えなくて。
電話もコール音が鳴るだけで応答はしない。
頼む…
無事で…
エレベーターのボタンの前に立ち、上を見上げる。
階数表示版の数字が増えていく。
落ち着かなくてポケットに手を入れたら潤がいつも食べてるフリスクが入っていた。
いつの間に…
それを振ったらカシャカシャと音がした。
それを手のひらに出す。
1つ2つ3つ…口に放り込む。
仕事の合間にするキスの味
ツーンと鼻につくこの味
潤とするキスの味
もしかしたら、これから俺のすることは潤の俳優生命に関わることになるかもしれない。
潤はとても素直で。
『翔がやれって言うならやるよ』と、俺が取ってきた仕事に文句をつけたことは一度もない。
俺が見たい潤を
俺が欲しい潤を
今までやらせてきた。
実力と人気を手にしても俺らスタッフや共演者に横柄な態度をとることもない。
『翔がとってきた仕事だからね』と、俺のために
俳優 松本潤を演じてくれる。
それを手離さないといけなくなるかもしれない。
それも、俺のワガママで…
だけど、俺にはお前しかいない。
チーンとエレベーターが到着を知らせた。
「ふぅ」
一つ、息を吐いた。
足を一歩前に出す。
何度か訪れたこの場所。
ここに来るっていうことは、そういうことで。
なんとも照れ臭くて、素っ気なく接していたかも。
だけど、部屋に入れば恥ずかしいなんて、どの口が言ってんだというくらい乱されるんだ。
「1103号室は向こうか…」
スッと俺の目の前に現れたのは、スイート専用のバトラーで。
俺に頭を下げると先へと歩きだした。
着いてこいってことか?
足音一つ立てないその柔らかいバトラーの歩き方。
だんだんと近くなる1103号室。
ドクンドクンと焦る胸。
だけど、バトラーの足元を見てると心臓の鼓動に習って早足になりそうな俺に、落ち着いて、と言われてるような気がしてくる。
前を歩くバトラーの足が止まった。
右を向くと1103と書かれた部屋のドアが。
ゴクリと唾を飲み込んだ。
