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『untitled』

第3章 一線を、越える


ニノから伸びた手。
頰に触れそうになった指を俺は避けた。

ニノは驚いたような顔をしたが、その手で自分の頰をまた、触った。

「手入れって…そんな、やってる?」

「あの人も、一応、日焼け止めは塗ってるらしいですけどね…意味ないって…でも、グラサン焼け?もあるし…手首とかもね…ヒドイですよ!」

「大野も船舶二級とったんだよな?」

「木村くんが、一級とったって知って…俺は無理だって言ってました」

ニノはメイクされながら器用に俺の話についてきた。

ニノを『可愛い』と言ったメイクさんはニノの前髪を整えながら、
「二宮さん、本当に肌きれい!何もしてないんですよね?」

「なぁーんもしないっ!」

「嘘ですよね?こんなにきれいなのに」

「嘘じゃないですって!」

頰をぐにぐにとされるがままのニノの顔は面白かった。

ニノのメイクはあっという間に終わった。

ニノはグレーの3ピースのスーツで。

ドラマの時より少し短くなった襟足と下ろした前髪は眉のすぐ下で切り揃えられた。

スタッフからこのあとの段取りの説明があって。

「お二人の演じた検事の正義の対決なので、“対決ランウェイ”にしました。赤側から木村さん、白側から二宮さんに登場してもらって、中央で二人が交差してもらってそれで歩いてもらって…あとから他のみなさんがついていく形で」

「交差するときは?」

「そこはお二人にお任せします」

「じゃぁ、木村くんにお任せします!」

スタッフの言い方を真似して、上目遣いで俺を見る。

『可愛い』ってのは…

なんか、わかるかも…

「あー、なんかドキドキする!」

「棒読みじゃん!」

他の出演者たちも揃い時間まで他愛のない話をしてた。


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