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林檎の香りがするお店

第2章 ほのかに香る貴方の話

『あの後、大丈夫だった?』

あの後、、?

『雨がいっぱい降った日。』

「あ、大丈夫、でした」

私の反応が面白かったのか、ふふっと笑うと手を口元に持っていく。

笑うときに多いその仕草に、癖なのかなぁと思ったりして。

沈黙が続くけど、なんとなく心地いい雰囲気が無理して喋らなくて良い気がした。

「あ、私ここです」

気がつけば、もう家の前。
もっと会話すればよかったなんて家を前にして後悔する。

『そっか。』

少しまた黙ると、遠慮がちに切り出される言葉

『あのさ、連絡先教えてくれないかな』

大野さんからそう言ってくれて、焦ると同時に舞い上がる。

連絡先を交換すると、早く入って!と言われ、

マンションの中に入ってエレベーターが閉まるまで大野さんは私を見送ってくれた。

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