
ながれぼし
第6章 きみごころ
昼飯後、俺は午後の講義を受けるために食堂を出て教室へと向かう。
午後一の先生は人気がなく、いつも収用人数の少ない小さな教室で講義が行われていた。
人気ない理由?まぁ馬鹿に多い宿題だよね。講義中は馬鹿に指されるし。そんな講義、好き好んで取る人は少ないって訳。
櫻ちゃんとは取っている講義が被る事が多かったけど、この科目は唯一大野っちとだけ被る講義だった。
なんで、今は大野っちと俺の2人。
この場をお借りしまして。
山田からの面倒な使命を果たすか。
とも考えたけど…
大「……」
それどころじゃないか。と隣で視線をいつもより下げて歩く大野っちを見て思う。
あの後、訳ワカメな大野っちに、俺からあの先輩がどんな噂の持ち主なのかを伝えた。
それを聞いた大野っちは、目で見てわかるくらい、サァっと顔色を変えた。
"温室育ち"つーのかなぁ。
だってさ。こんなの…って言ったら角立つけど、こんな事って、何処でもあんじゃないの?
序の口の 未成年の飲酒。
それに拍車や脅しをかける輩。
イッキ飲み、飲み過ぎによるアル中で病院。
最悪、死ぬか犯されるか。
こんな事件、良ーくテレビで流れてんじゃん。
知らないの?テレビ見ねーの?聞かねーの?男でもふつーに犯されんのよ?
知らなかったー。じゃ済まねーんだよ。
大「…タケちゃん」
「ん?」
ポツと聞こえた声に横を向けば
伺うように俺を見る大野っちと目が合った。
大「…平気…?」
「? なにが?」
大「…じゃないよね…」
??
大「俺…タケちゃんの事なのに全然気が付けなくて、怖かったよね……何もしてあげられなくて…ごめん。」
……ぇ
大「…今更だよね…」
は?俺の事?
てっきり、自分の置かされてる状況に気が付いて、どうしようどうしよう。なんて自分の心配をしていると思っていた。
俺のTシャツを掴み、ハの字に下がった眉毛。その下にある瞳は、揺れ…
そんな顔はまるで…俺を…
な…んで?
ぎゅぅ
途端、締め付けられた心臓。
「っ!は?!何勘違いしてんの?!あの先輩とはサークル飲みで見た事あるだけだし!サシで飲んだことねーから!それにそもそも!気に入られてないし!つーか俺ザルだから!」
謎の体の異変に焦った俺は、あわあわと弁解でもするように早口になった。
