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ながれぼし

第6章 きみごころ



櫻ちゃんと会ったのは、大学に入って最初の講義。


ざわざわ。ざわざわ。

入学してすぐの教室内は、誰もが友達作りに勤しんでいて、どこか浮わついていた。


そんな中、櫻ちゃんは教室の一番前の席に座り、静かに…静かに本を読んでいた。

でも、そこはこの溢れ出るイケメンオーラよ。
髪は金髪に近い茶髪で、ピアスもバッチリ開いてて、一見 怖く不真面目そうなのに、本を読む横顔は凛とし、その姿勢は背筋がシャンと伸び、ページを捲る所作や仕草は、どれも綺麗だと思った。

俺には、そこだけ…いや、多分皆もそこの空間だけ別世界に見えたんじゃないかな。

大野っちとはまた違った雰囲気で…大野っちの倍くらい、近より難かった。
だから、誰もが櫻ちゃんを気にはしてても、声を掛けられなかったんだと思う。



でも俺。そんなの気にしないの。

挨拶して自己紹介して、名前教えて?って、声を掛けた俺に、櫻ちゃんはすぐに本から顔を上げて
『俺は櫻井翔。よろしく。』と爽やかに笑った。



.

櫻「あははは!うーけーるー!タケって…あはは…!」


あれからずっと笑ってる櫻ちゃん。

櫻ちゃんは良く笑う。
出会った頃は、こんなじゃなかった。

いつからだろう?最近のような、もっと前のような…良く声を上げて笑うんだ。
それに結構不機嫌になるし、喜怒哀楽がハッキリしたっていうのか…なんかね?



櫻「っあーー…笑った笑ったぁ」
そう言って、目尻に溜まった涙を指で拭う。

「俺、櫻ちゃんのツボが全然わからない。」


櫻「え?なんて?」


「…なんでもなーい。んじゃ明日ね。」

俺は、手を振って歩き始める。
どうやら櫻ちゃんとは向かう方向が逆みたいだし。


櫻「あ、タケ!」


「ん?」
背中に声を掛けられて顔だけ向ければ…

櫻「なんか悩みあんなら言えよ?俺で良かったら聞くからな。」


「…は?」


櫻「まぁ聞くくらいしか出来ないかもだけどさ。話すと楽になる事もある。」


…ますます。は?


櫻「っていうのを最近学んだ。」


「???」


櫻「じゃぁまた明日な。」

俺から先に手を振ったはずはのに、櫻ちゃんは、笑って俺に手を振って、背中を向けてスタスタと歩いていってしまった。


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