
ながれぼし
第8章 in the water
卑怯かもしれない。
自分勝手なのかもしれない。
でも、俺はあの日
『自分の意思で水泳を辞めた。』と言った大野くんが
どうしても、寂しそうに見えて
もっと水泳をしていたかった様に見えて
仕方がなかったんだ。
.
「お!やっぱりか!
ジャージの着てるからか、筋肉無さそうに見えてさ。見た目じゃわかんなかったなぁ。」
そう言って、顎を擦りながら笑う。
グサリ。
「ですかね…。」
実際、俺の体は思春期に入っても筋肉が付きにくくて、雅紀や、他の水泳部員に比べるとひょろくて
それが、ずっと悩みの種でもある。
「でも。」
「ん?」
「ジュニアの頃よりは、筋肉付いたと思いません?
松岡コーチ?」
大・松岡「「……え?」」
バシン。と
背中を叩かれた時から…ううん。さっき、プール前で会ったときから、もしかしたらって思ってた。
数年前より、髪も長いし、髭も生えてるけど
俺がジュニアの時、夏の強化期間に1ヶ月ほどお世話になった人。
松岡「まさか…ぼーず…潤か?松本潤か!?」
「ぇ…覚えててくれたんですか?」
それにはびっくりだ。
松岡「忘れるわけないだろ!
そーかそーか。潤か!あのチビッ子潤か!大きくなったなぁ。」
松岡コーチは、そのパッチリした瞳を細め
ポン。と
今度は、柔らかく肩に手を置かれた。
「そりゃ成長はしますよ。俺、もうすぐ17ですよ。」
松岡「はぁ…時が経つのは早ぇな。俺も年取るわけだ。」そう言って右の口角を上げて笑うけど
…
っても、俺の記憶が正しければ、まだ20代のはず…
松岡「潤の活躍は、耳に入ってたよ。
辞めちまったのかと思ってた。ここ数年、名前を聞かなくなったからさ。」
…
……それは
大「ちょちょちょちょっ!ちょっと待ってよ松兄!」
松岡「ん?」
と引っ張られるように松岡コーチが振り返れば
大「ん?じゃないよ!俺、全然ついていけてない。」
むす。とした大野くんがいた。
