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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

亘は、雪斗との待ち合わせ場所に向かおうとしていた。
最寄り駅は、自宅からの方が近いのだが、数日前から、カプセルホテルに泊まっているため、歩く距離は長くなる。
雪斗と悠希と3人で話し合おうとして、誤解により雪斗を怒らせてしまい、また、悠希からも恋の告白を受けた。
そんな悠希の気持ちを知った以上、住まいを共にすることは出来ない。
いずれは、悠希にマンションを譲り、自分は家を出るつもりだった。
悠希をマンションに一人で残し、自分の新居が決まるまではと、カプセルホテルで寝泊まりしていたのだ。
「これで、雪斗が気に入ってくれれば、こっちのものだ」
不動産のカタログと見積書の入ったバッグを抱えて歩き続ける。
家を出てから雪斗とも悠希とも会っていない。
「雪斗には、今度こそ最後まで話を聞いてもらわないとな」
「危ない!」
呟くと同時に、女性の叫び声がする。
声の方を見ると、幼い子供が道路の真ん中で何かを、拾おうとしているのだ。
数メートル前から、車が走ってくるのが見える。
あと少しで、子供と接触してしまう。
助けなければ!
道路に向かって、亘は飛び出していた。

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