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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

あの後も、亘といると不思議と心が軽くなり、辛い出来事を乗り越えることが出来た。
酷いいじめを受けたときも、性的暴行を受けたときも、亘の大きな優しさで、苦しみは和らいでいった。
彼から与えられた温かい思いやりが、脳裏に包まれていく。
どうして、忘れてしまっていたのだろうか。
美紅のいうとおり、きっと亘には何か考えがあったのかも知れない。
あの時は、頭に血が上り、亘の言い分を聞こうともしなかった。
「よしっ!」
スマートフォンを手に取り、亘の着メロを鳴らした。
「もしもし、雪斗か?」
亘が電話に出たことに、ほっと胸を撫で下ろす。
「亘、この前の話の続き聞こうと思って……」
「そうか、良かったよ。ちょうど俺も雪斗に話があったんだ。明日、会えないかな。いっとくけど悪い話じゃないぞ」
「本当に?」
「ああ、この前、雪斗が誤解して最後まで聞いてくれなかったからな。明日、詳しいことを話すよ。雪斗も喜んでくれると思うんだ」
亘の言葉から別れ話ではないらしいということに安心した。
すっきりしない気持ちから解放され、美紅に感謝する。
しかし、突然の出来事により、亘との距離が開いてしまうことになるとは、夢にも思わなかった。

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