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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

「そう。何だか複雑みたいね」
「そういうわけで亘は悠希のことばかり大事にするし、もう、俺の事なんてどうでもいいのかも知れない」
話を聞いた美紅は、少し考えこんでから言った。
「亘先生がそんな不誠実な人にはみえないけど。何か考えがあったんじゃないかしら。一度、話くらい聞いてあげなさいよ。このまま、逃げ回っていても解決しないでしょ」
「それはそうだけど……」
「とにかく、今度、亘先生から連絡が来たら、ちゃんと話し合いなさいよ。それが出来なければ、あの人の心はどんどん離れて行ってしまうわよ。雪斗は、それでもいいの?」
「いいはずないじゃないか」
確かに、美紅の言うとおり、このままでいいわけがない。
「だったら、決心がつく、おまじない教えてあげる。目を瞑って、亘先生の事、どうして好きになったのか考えてごらんなさい。そうすれば、今、どうするべきか分かると思うわ」

美紅の言ったとおり、亘を好きになったいきさつを、目を瞑って考え始める。

出会いは、寒い雪の中だった。
悪徳なモデル事務所で詐欺にあい、浴衣一枚で逃げ出したところを亘に救われたのだ。

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