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雪に咲く花

第32章 すれ違いの始まり

「さっき、話そうとしてたのは、悠希君には、このままここに住んでもらって、俺がここを出ていくと言うことを伝えたかったんだ。雪斗とは、いずれ一緒に暮らしたいと思っていたし、あいつとの新居をこれから決めていこうと考えていた。手頃な場所の広告を集めて来たからね」
テーブルの上に、不動産の広告が数枚並べられてある。
「亘さん、ここを出ていくの?」
悠希が驚いて亘を見る。
「ああ、これが一番いい方法だと思うんだ。君には悪いが、俺には雪斗が大切なんだ。これからも一緒にいて守ってやりたいんだ」
「そんな……俺はどうしたらいいの?」
すがり付くように見つめてくる悠希に、亘は強い意志を伝える。
「ごめん、俺には君を支えてやれない。でも、君は新しい道を歩き始めたばかりだ。俺よりいい人がきっと見つかるよ」
「俺には、亘さん以上に好きになれる人はいないのに……」
「それは、悠希君が、まだ広い世界を知らないからだよ。色々なものを見て、たくさんの人と知り合えば、きっと素敵な人が見つかるさ」
どんなに強い思いを抱いても、亘の心に自分が棲み着くことはない。

その夜、心の行き場のない悠希は、涙が枯れるほどに泣きあかした。

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