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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

…俺の気持ち、伝わったかなぁ?

俺が粒々模様の天井に顔を向けつつも、彼女の反応をチラチラ見ていると、「言ってなかったんだけど」と彼女は話しだす。

「侑生君、あのね。…ごめんなさい。私、お料理下手なの…っ」

決死の告白のように、目をぎゅっとつぶった上で身を縮こませて言うんだけど。

…………。
突然、何の話っ?

俺との身体関係で悩んでたんじゃなかったのか?
だからのんびり進もうと、俺の覚悟を打ち明けたんだけど。
訴える彼女は真剣で…ああ、俺が結婚を口にしたからこうなったのかと理解した。

「私、調理実習でも洗うの専門だし。シェフ係に指示されないと何をしたらいいのかわかんないのです」

シェフ係?
今日日の調理実習には、そんなんいるのか?
みんながみんな、レストランに就職するわけでもあるまいし、と思いつつ、取り乱し5秒前みたいな彼女の頭を撫でる。

「俺だってあんま上手くねぇ。ほぼ作ったことねぇよ。……それなら、一緒に練習しよっか?」

俺の部屋に丁度なキッチンがあるじゃねぇか。
裸にエプロンの夢は、置いといて。

「あ、今のいいアイデアだな。俺、花野ちゃんと料理してみてぇ!」

それって、新婚夫婦みたいじゃね?

「きゃ、指切っちゃった」彼女の指先に血液が一滴。

「どれ?わっ、重症だなっ。今日は俺が身体洗っちゃる」彼女の手首をつかんで、風呂場へ。

「もうっ、侑生君ったらぁ」と、あきれる彼女を脱がせていく。

みたいなー!
あれ?料理は?……俺にとっては花野ちゃんが…。
ま、いっか。

「俺、ワクワクしてきた!これから食材買いに行こ!」

立ち上がった俺。
再びぽけっとした彼女の、顔をぐっと自分の胸に押しつけて涙を吸いとらせ、手を引いて促した。

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