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僕ら× 1st.

第27章 牛、歩く --Mkt,Ar

「でも、アル先パイに応えたいって思うでしょ?」

「それはそうだけど。他のことでも…」

「男は"好き=シたい"なのよ?"性欲と直結よ?」

マコちゃん、俺の彼女にそれを言うか?

「そうよ?花野ちゃん。エッチして初めて、男は応えてもらったって思うのよ?」

これは、誰かな?
マコちゃんよりはソフトだけど、言ってることは同じか…。

「えー?そんなことないよぅ。もっと精神的な繋がりがあるはずだもん」

花野ったら、……可愛いなぁ。

と、ほころんでいたところに、差し込まれた質問。
俺の奥にいつも潜んでいる不安が明確にさらされる。

「ねぇ、花野。速水のこと、今でも好きなの?アル先パイ以上に?もし今、速水が現れたら、花野は速水の元に行くの?」

!!!!!

もしも伊織が現れて口説かれたら、花野は俺から離れるのか???
あの伊織に似てるとか言う男でも……?

「アル先パイも速水みたいに、あんたから去って行ってもいいの?」

逆だろ?
俺が引き留めたって、花野は行くんだろ?

いたたまれなくなった俺は唇を噛む。
"もしも"の話に踊らされるなんて馬鹿げてると、鬱屈とした気持ちを飛ばそうと首を振った。
その耳に聞こえてくる悲しげな声。

「う……そんなのやだ…やだよ…」

俺だって嫌だよ、花野から離れるなんて…。

彼女からの返事に俺は緊張を少し解いて、息を整える。
注射話が出たところで、ドアをノックした。

花野を抱き締めたくて。
俺から離れなければ大丈夫だと伝えたくて。

安心させたくて。。

花野を、自分を…。

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