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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

車内でアルが話す。

「なぁ、マスター。お前の名前、晄志(コウシ)って言うんだっけ?」

確か、伊織がそう呼んでたよな?

「そうです」

「じゃあ、晄志。これからも頼りにするけど、よろしくな?」

そうだよな。
依田って呼ぶと、あだ名のせいか即"グレートマスター・ヨーダ"を思い浮かべちまう。
あの緑っぽい賢人に見透かされる気がするんだ。

「吉坂先パイ…。だったら俺も、呼び捨て?」

「そう。だいたいが始めからおかしいんだよ。お前も花野ちゃんも。俺より後に生まれただけだろ?先パイ先パイ言うなよ。俺は"侑生君"って呼んでほしいのにさ」

アル…。
そんなのこいつにぼやいたって……。

「俺は嫌ですよ?"侑生君"なんて呼ぶの」

そりゃやめとけよ。
あの2人、デキてるって絶対思われるっ。

「ったりめぇだ。俺だって嫌だよ。お前は"アル"って呼べよ」

さっきのお前の説明がおかしいんだよ。

「"アル兄"じゃなくて"アル"でいいんですね?」

「俺みたいな兄貴、いらねぇだろ?敬語も取れよ?お前が敬語なしで喋ったら、花野ちゃんも俺にフツーに喋ってくれるようになるかも…で、いっきに距離が縮まる。しし」

「アル兄。そういう内々の心は、黙っておくもんだよ?」

「どこに不都合があんだよ?」

アルは依田をライバルとは思ってねぇんだな。
それとも穏やかに威嚇してるのか?

「……アル兄らしくていいよ……」

順応の素早い依田に、「俺も柊でよろしく」と、ハンドルを握る手を上げた。

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