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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

「落とし物なら誰のかわからないよね?」

もう依田の勝利だな。
唇をギリッと噛むアルの肩を2~3度叩く。
お前のせいじゃねぇ。

「わかってたわよ。宮石がつけてたのは」

「わかってて返さなかった?」

「濡れるから預かっといてって言われたのよ。あとで返すわよ」

花野ちゃん自ら渡した?
自分に敵意を持つ女に?

それはいくらおとぼけな花野ちゃんでも、わかるんじゃないのか?

「ん?落ちてたってのは?」

「説明するのが面倒だったから、そう言っちゃっただけよ」

室内に乗り込む勢いのアルの胸を前から押す。
早まるな、ここは抑えて……と、耳打ちする。

俺たちは再び、部屋の中からの声に耳を澄ました。

「ま、宮石たちも見つかったみたいだし。これ預かっとくね」

「え?見つかったの?」

「……何?見つかっちゃいけない理由でもあるの?」

「よかったなぁと思って」

「ふうん?じゃあ、俺…また聞くことがあるかもしれないけど」

出て来た依田に「おつかれさま」と声をかける。

「だいたい聞いた。お前、すげぇな」

「宮石は今、どこにいるんですか?」

依田は、顔を引き締めて尋ねてくる。

「近くの病院にだって。お前も来る?」

「そうですね…。心配なので行きます。帰りはきっと連行されます」

クルマに乗った俺たちは、ゆっくりと暗くなりかけた山道を降り始める。
周りは1m以上の雪が積もっているが、除雪された道路にはアスファルトがくっきりのびていた。

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