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僕ら× 1st.

第22章 遭難 --Shu,Ar

俺が押し入れから畳の床に着地した時には、女子連中は正座で座り、顔を伏せていた。

その前に立つのは険しい顔の柊、そして表情を固める依田。

「お前ら、何とか言え。…おらっ、遊びじゃねぇんだ!さっさと答えろ!」

何の騒ぎだ?
フェミニスト柊が女子相手に言葉を荒げるなんて…。

でも、今は緊急事態。
こんな名前もないヤツらに絡んでんなよ?

発信器にズレがあるんだ、このロッジ周辺を探してみなきゃ……。
と、思ったのに。

柊の手にあるモノを目にした俺は、混乱状態に拍車がかかる。

「何で、これがここにある?お前ら何か知ってんのか?」

何で、彼女が持っていないんだっ?

「どうしてこれを、お前らが持っているんだ?」

膝をつき、柊の手の中のそれを確認する。
破損は特にない。
やはり、俺のあげた発信器…。
世界に2つとあるわけねぇ。

彼女が落としたのか?
捨てるなんて、思えねぇんだけど…。
思いたくねぇんだけど……?

あれから音楽室への出入りを避けて、部活時間は教室で譜面を読んでいた彼女。
一昨日、廊下で彼女に渡した。

無事に帰って来られるお守りと言って、彼女の手首にくっつけた。
渡した時は、"チャームが可愛い"と喜んでくれていたのに。

「こいつが持ってたんだ。さ、何故だ?」

「怒らないで…」

何てこと……。
これで彼女の居所を確認する手段が…。
もう人海戦術だけだ。

超上級の難関ルート……。
日が沈もうとしている今、こいつらに時間をかけてもいられねぇ!

「俺っ、状況を見てくる!」

どこかに教師が集まる…またはレスキューの本部があるはずだ。
ロッジの管理人に連絡先を…。
それに、和波さんがもう着いているはずだ。

「おい、アルっ!……俺も行く。依田、聞いといて」

先を急ぐ俺を、柊が追走した。

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