テキストサイズ

僕ら× 1st.

第21章 健闘 --Ar,Thk,Kn,Shu

「近づかないで!」

両手に持った楽譜を、俺に向けて拒む。
その楽譜には傘を持った女性が描かれていた。

「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス!」

「ええっ?」

何何何?
スーパーカリフラ…ワー?
あの緑の森のような野菜?(←それはブロッコリー)

それに、花野ちゃんがそんな早口で喋るなんて……。
俺が呆然とする中、彼女はピアノをまわり対角の位置で身構える。

「今日の先パイ、カッコよすぎるから近づかないでください!」

「な、何だよそれっ」

俺は机を飛び越え、逃げる彼女を直線最短距離で追いかけて腕をつかむ。

「やだ、離してっ!」

「花野ちゃん、きゅんって何?」

引き寄せようと力を入れると、彼女は必死に抵抗を見せる。
でもこんなこと言われたら、俺はもう引けねぇ。

「それは俺のこと、好きだから?」

彼女はピタッと動きを止め、頷いたすぐあとで首を横に振る。

どっちだよ?

その時、きゅーんと俺の胸が鳴る。

「うっわ、これかよ。花野ちゃん、俺のもきゅんって鳴った…最強出力データ読み込み中みてぇ」

「先パイっ、やっぱり中身は機械!きゃあ!」

俺に胸きゅんだって!
たまらなくて抱き締めると、彼女は力なくフニャッと崩れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ