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僕ら× 1st.

第21章 健闘 --Ar,Thk,Kn,Shu

~吉坂侑生side~

インタビューに答えてからの俺の鞄は、玉ねぎ製品で溢れる毎日になった。
玉ねぎチップに、玉ねぎパイまであるなんて……。
俺はまるまるな野菜の玉ねぎを思い浮かべて喋ったってのに。

ウカツに好きな食べ物なんて言いふらすもんじゃねぇな。

まあ、いいや。
持ってきてくれるコたちには、"俺の味方になってくれよ"と頼んでおいたし。

さてと。
音が聞こえないのを確認して音楽室のドアを軽くノックして入る。

「よ!元気?」

ドアのすぐそばで荷物をおろしていた彼女と目があった。
あれ?今来たとこかな?

「っ……」

と、言葉に詰まった彼女が、こちらを見て胸を押さえて静止している。

「な、何?」

いつもにない反応で、こちらもどうすればいいのか迷う。

もしかして俺、玉ねぎくさい?
もう自分ではわかんねぇんだけど。

…まさか、心臓発作とかじゃないよな?

その場合、マッサージ?
いや、エロいことなんて俺、考えてねぇぞ?

「…や、やだっ」

と、彼女は両手で顔を隠しだした。

「え?」

俺の頭の中、読まれた?
いや、あり得ないよな。

チャックあいてる?
いや、大丈夫だ…。

思わず確認してしまった。

「ああっ」

と、手をずらして僅かにこちらを覗くけど、何だ?

わけがわからないまま後ろ手にドアを閉める。
もう少し近づいてもいいよな?

俺が歩を進めると、彼女は少し後ずさる。

「花野ちゃん?」

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