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僕ら× 1st.

第21章 健闘 --Ar,Thk,Kn,Shu

好みじゃないその男は、私に尋ねてくる。
最近話題のあの2人について。

「ね、桃湖ちゃん。花野ちゃんと吉坂ってどうなの?」

「え?まぁ、わりといい感じ、かなぁ?」

ヴォーカルの私を知ってんねんもん、ピアノ花野のことも承知やよね。

あの校内放送は、吉坂らしいというか…。
恥も外聞もない男やなぁと感心したけど。

「そっか……。サト、これからどっか出掛けるのか?」

ただの挨拶替わりの話題だったのか、その男はすぐにサトに向き直る。

「ここまで送りにきただけ」

「じゃ、帰りにうちに寄れよ。晩飯でも一緒に」

「そうする」

その男の誘いに、サトはすぐに頷いた。
仲良いんだ……。
でもって、その女子たちは家に帰るんよね?
サトとは知り合いでもなさそうやし。

3人と別れ、次の電車が到着するギリギリまでサトと話す。

「ね、あれって誰だっけ?」

「知ってるんじゃなかったのか?同級生だろ?栗田だよ」

「んーん。顔しか知らないわ」

「へぇ。あいつ影薄いんだ」

おかしそうにサトは口の端を上げる。

「両手に花だったね」

どしたらあんな風に女子が2人もくっついてくるんやろ?
不思議だけど、どうでもよかった。

「あいつ、女のコ大好きだからなぁ。でも桃湖がいっちゃん可愛かったな」

嬉しそうににんまりと笑うので、私も幸せになる。

「またまたぁ。じゃあ、時間だから」

「また来てくれよな?」

唐突にキスされて私は1人、電車に乗り込んだ。

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