テキストサイズ

僕ら× 1st.

第21章 健闘 --Ar,Thk,Kn,Shu

「あいつら何?片付けてけよな」

先パイの前にコーヒーカップを置く。
先パイはブラックで飲むから、取っ手は15時の方向だっけ?
あれ?3時でいいのか。

「何?って、吉坂先パイのファンの方たちですよね?」

そして、私のお客様。
あーあ。
クッキー、ほとんど食べてもらえなかった。

「あ?そんなん俺は認めてねぇ」

「じゃ非公式で」

余ったクッキーをかじる。

「…あいつらに何か言われた?」

「いえ。先パイのこと心配されてました」

「俺の何が心配?」

「……先パイ、あまりここに来られない方がいいかもです」

あの人たちの言うことは最もだ。
もう伊織君がいなくなってから、自分じゃないような浮わついた私だから。

1人でいると寂しくて。
先パイの気持ちに甘えて、なのに応えずに。
こんな関係はよくない。

「俺はここに来たくて来てるんだよ。花野ちゃんに会いたくて来てるんだ」

先パイはハイスピードの直球を投げてくる。
私は、受け取れない…。

「私は先パイに甘えちゃうから、すみませんっ。先パイにもファンの方にも失礼だから」

沢山の優しさを貰っておいて、私は少ししか返せていない。
ピアノを弾いたらお礼になるなんて、それはプロの世界。

「何言われたか知らねぇけど、あんなヤツらの言うこと気にすんなよ」

「だってファンは大切にしなきゃ。サポーターですよ?」

格闘技もサポーターっていうのかな?
でも、依田君も説いてたもんね、サポーターの大切さを。

「俺はスポーツ選手でも芸能人でもねぇからそんなのいらねぇの」

あんなに真剣に先パイのこと想っているんだもの。
だからこそ私への憎しみに変わって…。

私より先パイの隣に相応しい人たち。
先パイがあの中の誰かとおつきあいとなれば、私なんかに振り回されないから。

「先パイ素敵だから、みなさん応援したくなるんですよ…」

武道大会だって、とびっきり輝いてた。

「……わかった。あぁ、ありがたいねぇ」

ホントに素敵だったから……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ