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～羽賀桃湖side～

「何あの女、マジむかつく」

柔道場へ戻ろうという私の耳に、そこらでよく聞くセリフが入ってきて立ち止まる。

「調子に乗ってるよね。さっきはアルを突き飛ばしてたし」

「アルもアルよ！あんな女のどこがいいわけ？」

吉坂の追っかけ！
ってことは、"あの女"=花野！

「弟のお下がりなのにね」

「二股かけられてフラレたくせにね」

ここからはよく見えんけど、何人いるんやろ？

「ピアノが弾けるだけのグズ女よ？」

「たいして上手くないよね」

「あんなの薄幸の美少女、気取ってるだけよ。キモいったら」

うっわー。
マジでヤバイよ、花野。

武道大会の裏で陰口大会やってるよ……。

「あのコって社会人ともつきあってなかった？」

「え？あれはお兄さんじゃないの？」

「兄は大学生よ。手におえない暴君らしいよ？」

兄…2人いたわね。
暴君？
そんなんやったら妹のサマフェスなんかにわざわざ顔出さないやろー。

物音を立てないようにしながら私は、その場をあとにした。