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僕ら× 1st.

第20章 夏祭り --Hzm,Mkt,Ar,Kn

夕方も暮れかけになり、人の流れに添って川原の方へと進む。
夏祭りの最終イベント、花火見物のため。

歩いていると、俺の中でムズムズと要求が膨れる。
もっと彼女に近づきたい。

「花野ちゃん。迷子になると困るから、手を繋ご?」

「え、あ…」

何か言われる前から手をつかみ、ぐいっと引っ張った。

それきりしばらく無言で歩く。
花野ちゃんと手繋ぎデート、やってみたかったんだよなぁ。
前に無理に繋いだこともあったけど、今回も彼女は拒みはしなかった。

「ここから見ようか」

石垣の上に腰を降ろし、隣に座らせる。

少し離れた横でカップルが抱き合ってて…いや、その反対側もキスの最中っ?

花火っていえばそんなもんかな?
家族連れもいるにはいるけど。
目のやり場に困るっ。
隣には花野ちゃんがいるしっ。
俺だって花野ちゃんにくっつきたいのに!

「俺、花火って出向いてまでして見るのは初めてなんだけど、こんなイチャついてんの?」

胸の内を悟られないよう苦笑いで言う。

「いえ、私も知りませんでした」

次第に陽が落ちて薄暗くなった辺りから、恋人たちの囁きが聞こえるような聞こえないような。

混みだした川原は、だんだんと人だらけ。
と、彼女の横にも男がドンッと座ってきて、彼女は俺の方に身をずらすけど、さらに身体を寄せてくる…こいつ、俺が見えねぇのか!
この俺から彼女を奪えるとでも思ってんのかよ?

かといって、この狭所で殴りかかるのは得策じゃねぇ。
この出で立ちの輩は、光り物持ってるかもしんねぇし。

「花野ちゃん。ここ入って」

脚の間に誘うと躊躇する彼女。

「こういう時に守れなきゃ男じゃねぇだろ?のしちゃってもいいんだけど」

「お邪魔します…」

脅すと遠慮がちに恥ずかしそうに彼女は俺の間に入る。
今だけは俺だけの花野ちゃん……。

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