テキストサイズ

僕ら× 1st.

第20章 夏祭り --Hzm,Mkt,Ar,Kn

~吉坂侑生side~

ジリジリと焼ける夏、高校野球中継も正念場。
ひいきの学校はベスト4で去ったので、そこに勝利したチームをそれとなく応援する。

ま、そんなに興味があるわけでもねぇんだけど、高校生も今年最後と思うと、同い年の青春野郎を見ておこうと思って。

一所懸命でさ、あの砂をかき集める姿がぐっとくるんだよな…。

ウィリス・キャリア(エアコン発明者)のおかげで涼しい室内、テレビと交互にモニター上を動く点を見つめる。

俺が伊織にやった追跡機。
小柴を経由して俺の手元にある。

発信器を持っているのが花野ちゃんだってことにはすぐに気がついた。

伊織は、"兄貴頼むよ"と言ってるつもりなのか?

あいつ、俺の気持ち知ってたのかもしれねぇな。
いや、偶然か?

だからって、それが花野ちゃんと別れて他の女と旅行する理由にはならないけど……。

引き出しにしまいこんだ1冊のノートを取り出す。

花野ちゃんが見つけた伊織のノート。
それぞれのページのファーストレター:先頭文字を繋げると、文章になった……月へ飛ぼう、星に囲まれて遊ぼうと。

そんなこと今更、花野ちゃんに伝えて何になる?
それに、彼女が本当に宇宙に行こうとしたらどうすんだよ?

伊織が天で待ってるはずもない。
彼女には、俺の近くにいてほしい。

……きっと伊織は、彼女に気づかれないで自分の言葉を持っていてほしいだけだ。
だから、このノートは花野ちゃんに渡さなきゃ…。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ