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僕ら× 1st.

第20章 夏祭り --Hzm,Mkt,Ar,Kn

でも、どう逃げればいいんだろう。

こんな時、速水がいたら……。
ヤツなら花野をかばいながら、その辺の釘のついた棒を振り回して追い払うだろう。
まず、不用意にこんなところに入らない。

土壇場で速水を信頼している自分に驚く。

そう、速水が花野を振るわけない。
わからないけど、とにかく本心じゃない。

ただ、今はもういないんだ。
現実に戻らなきゃ。

用事を思い出したなんて言って引き返せるとは思えないし。

そんな悠長なことを考えている間もなく、始まった。

「離せっ!」

花野の鞄をつかむ男をヨーダが引きはなそうと蹴り飛ばす。

「ヨーダ!散るぞっ!」

私もつかまりそうになり、康史と走り出す。
2人かわして出口を確認する。
けどっ。

「花野はっ?」

振り向くと、花野を抱えあげた男にヨーダが攻撃しているのが目に入る。
花野もジタバタとその男の顔に手を伸ばしているけれど。
でも、多勢に無勢。

「俺は戻るっ。茉琴はこのまま逃げろっ!」

「私だけ逃げるなんてできないっ!」

「来んなっ!」

康史を追いかけて引き返そうとした。
そんな私の方にさっきの2人が走ってくる。
そのうちのひとりに康史が脚払いをかけて止めてくれる。

私を追うのは中年の女性。
つかまるものですか!

ここは一旦下がって、大人に連絡した方がよさそう。
どこかに隠れよう。

ヤツを撒こうと走りながら見回していると。
私たちが入ってきた路地の辺りで、叫ぶような呼び声が聞こえてきた。

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