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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

追いかけて、図書館を出たところで声をかける。

「これ、落としたよ?」

慌てるキミ。
ふふっ、可愛い。

照れながらカードの秘密を教えてくれる。
自分のカードだと、ごまかしてもよかったのに。

俺の、速水伊織の軌跡を追ってくれているの。

ごめん、花野。

俺はキミが悲しんでくれていることが、とても嬉しい。

そのカードの持ち主は、俺に似ていると言う。

キミの中に伊織がいる。
顔を変えても見つけてくれる。
声だってキミの知っている伊織とは違う、よね。
俺だって、包帯を取って映した鏡に大笑いしたくらいなのに。

日に焼けた俺の手をじっと見つめだすキミ。
気づかれちゃいけないと、俺は手を握りしめた。
目立った特徴もない手だから、大丈夫だとは思うけど。

ありがとう。
ごめんね。

俺はまだ名乗れない。
名乗ったら、ここまでした意味がない。

少し気を抜くと、キミに打ち明けたくなる俺の想いを。
俺の恋愛話として張本人であるキミに伝える。

「今でも大好きだよ」

俺の告白を受けて、喜んでくれるキミを見たいのに。
キミは別人への告白だと思っている。

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