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僕ら× 1st.

第19章 雲の上 --Tk,R

~世尾湊side~

速水から世尾。
2人の涙をここに集めて。
いつかキミの元に帰る、誓い。

"すゑに あはむとぞおもふ(再会を望む)"

キミとまたいつか、演奏できる日を。

コーヒーを飲みながらマグを眺めていると、デスク端でキミが動く。
門を出て進みだす。

さて、俺も。

「リィ兄、また図書館?」

ひとつ年上の弟分、孝明が棚のファイルを取り出しながら尋ねてくる。

俺にイスラムの名前を与え、その中間を取って"リィ"と呼ばせるように計らったのは、小柴さん。
俺がいづれ伊織に戻っても、戸惑いなく呼べるように…だろうか?
俺の出自を把握している彼なら、愛称を知っていてもおかしくはないけれど。

その時は必ずや来るという、俺に対する励ましだろうか?

「そう」

俺が短く返事をすると、孝明は興味もなさげに返してくる。

「ふうん。好きだね、本」

そうさ、俺のスイートライブラリー。

変装後、彼の店から自転車にまたがって梅雨明けの下界へ繰り出す。

本を読みに?……まさか。
"彼女に会いに"だ!

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