
僕ら× 1st.
第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk
次の週の火曜日は、花野の方が先に入室していた。
部室の本棚を片付けていたら、速水のノートが出てきたと涙ぐむ。
そこへ顔を覗かせる男。
「や!花野ちゃん、どうしたの?元気ない?」
「えっ?軽く落ち込んで見えるけど、元気です!」
その顔で言っても、バレバレよ。
「何があったの?俺には言えない?」
目をぱちぱちさせて椅子から立ち上がり、持っていたノートを差し出す。
「…伊織君のノートが出てきました。何かのヒントになるなら…」
と大切な形見を吉坂に渡す。
あのきっちりしている速水が忘れ物をするとは思いにくい。
そのノートブックは花野への故意の忘れ物やと思うけど?
「ありがとう」と言ってノートをめくる彼。
「あいつはまたこんな、こ難しい…初めて会った時からすげぇ男だったけどな…」
びっしりと書き詰めたノートに、速読でもするかの様に目を走らせる。
「見つけてくれてありがとう。これ、俺が預かっていてもいい?」
まぁ、花野が持っていても辛いだけ。
「本体の上がらないあいつには葬式もしてやれねぇし。認めたくねぇんだけど、送ってやれないのもな…」
目を伏せる吉坂を花野は見つめ、軽く微笑んで横のケースに手をかける。
「先パイ、ホントに優しいですね。そんな吉坂先パイには…"カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲"です」
"送ってやれないのもな"と言った吉坂の気持ちに添う、彼女なりのフューネラル。
「えーと?」
そのケースからヴィオラを取り出す。
「ゴッドファーザーの映画、ご存知ですか?」
「見たことあるよ。長編だけど俺、あれ好き」
「もともとはオペラで、その映画中でも入ってくる曲です。私の大好きな曲。でも、生きていると信じて…」
「ヴィオラの曲?」
「うーん、どっちかというとヴァイオリン曲ですけど、こっちのが好きなので」
柔らかいアルト音で紡ぎだす物悲しいアヴェ・マリアが響く。
部室の本棚を片付けていたら、速水のノートが出てきたと涙ぐむ。
そこへ顔を覗かせる男。
「や!花野ちゃん、どうしたの?元気ない?」
「えっ?軽く落ち込んで見えるけど、元気です!」
その顔で言っても、バレバレよ。
「何があったの?俺には言えない?」
目をぱちぱちさせて椅子から立ち上がり、持っていたノートを差し出す。
「…伊織君のノートが出てきました。何かのヒントになるなら…」
と大切な形見を吉坂に渡す。
あのきっちりしている速水が忘れ物をするとは思いにくい。
そのノートブックは花野への故意の忘れ物やと思うけど?
「ありがとう」と言ってノートをめくる彼。
「あいつはまたこんな、こ難しい…初めて会った時からすげぇ男だったけどな…」
びっしりと書き詰めたノートに、速読でもするかの様に目を走らせる。
「見つけてくれてありがとう。これ、俺が預かっていてもいい?」
まぁ、花野が持っていても辛いだけ。
「本体の上がらないあいつには葬式もしてやれねぇし。認めたくねぇんだけど、送ってやれないのもな…」
目を伏せる吉坂を花野は見つめ、軽く微笑んで横のケースに手をかける。
「先パイ、ホントに優しいですね。そんな吉坂先パイには…"カヴァレリア・ルスティカーナの間奏曲"です」
"送ってやれないのもな"と言った吉坂の気持ちに添う、彼女なりのフューネラル。
「えーと?」
そのケースからヴィオラを取り出す。
「ゴッドファーザーの映画、ご存知ですか?」
「見たことあるよ。長編だけど俺、あれ好き」
「もともとはオペラで、その映画中でも入ってくる曲です。私の大好きな曲。でも、生きていると信じて…」
「ヴィオラの曲?」
「うーん、どっちかというとヴァイオリン曲ですけど、こっちのが好きなので」
柔らかいアルト音で紡ぎだす物悲しいアヴェ・マリアが響く。
