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僕ら× 1st.

第17章 水の中 --Khs,Ar,Thk

~羽賀桃湖side~

高等部の第2音楽室。
私と花野は今年度からここでバンドをしている。

現在、部員は2人。
3年の私はこの夏で終了。
その後、花野はひとりで続けるんやろか?
速水と結成したこのバンドを…。

最近花野は、よくラジオを聴いている。

"ラジオからは霊の声が聞こえる"と耳にしてから……。
まさか、本気やないやろうけど。

今、流れているのは、"あなたが私にくれたもの~"で始まる歌。
たくさんのプレゼントをくれた彼には大切な人がいた、って歌。

さよならの歌詞にアップテンポのリズム。
響くドラム。

「私、よく平気でこの歌、聴けたなぁっ」

「今じゃ、泣けてきちゃう」と、言って笑う。

「そのネックレス、だよね」

鎖骨の間に光る花。

「うん……他にも、オルゴールとか、香水とかマグとか」

流石、速水。
女のコの好きそうなプレゼントね。

「箱に入れてとっときなよ」

「外さなきゃ、ダメ?」

自分の首元に手を当てる。

「それは花野の自由だけど…。ね、花野。速水がつけてたブレスって……」

「私があげたの」

花野はネックレスを外して手のひらにジャラっと転がす。

「やっぱそっか」

時折、速水がブレスにキスしていた姿を思い出す。
あんなに想いあっていたのに、なぜ速水は……。

中等部の音楽室でも、花野のロングヘアをいじりまわし香りをかいだりして、そのラブラブぶりに私を苛つかせていたのに。

こんなに悲しんでいる花野を見て、あいつが何もしないなんて。
花野の傍を死んでも離れない勢いだったのに…。

あいつはゴーストになって、今現在も花野にちょっかい出して笑っている…そんな気がしてならない。

「いつまーでーも、私のことー、忘れないでいてねー」

ラジオをプチッと切った花野は、他の曲を弾きだした。
ミニタオルに寝かせたネックレスをピアノの上に置いて、まるで、速水に聴かせているように……。

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