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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

その夜、道場に遊びに行く。
こんな日は、身体を動かして発散させるのが一番だ。

なのに、俺はヤル気がなかなかわかなくて、ノロノロと柔軟もどきをやったりやらなかったり。
柊は足取り軽く活動してるというのに。

「お前、何ウネウネしてるの?」

留学先から帰って来ていた兄ぃが、ペシッと俺の頭を払う。

俺の隣にあぐらを敷き、前屈しだす。

「おかえり、兄ぃ。俺の好きになったコさぁ…弟の彼女だった」

「へぇ…やるな、お前の弟」

動きを止めて俺をチラッと見たけど、すぐに視線をずらす。

「うん……」

俺は三角座りのように膝を抱えて、床の木目をじっと見据えた。

「お前は告白したの?」

「卒業式にボタンを渡したけど、告白はできなかった…」

くしゃみ告白は、数に入らねぇよな…。

「ふうん?お前のボタンって争奪戦じゃなかった?」

柊から聞いたのか、あのお喋りめ。

「そうなる前にとっといた」

言葉は無理でも、彼女のなかに形で残したくて。

「……伝わってるといいな」

「どうなんだろ…」

俺のボタン、大切にしてくれているのかな?
他の男から貰ったボタンと一緒に、二度と開けられない箱に閉じこめられているのかもしれないな。
それとも…ごみ箱へ……。

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