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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

永井が彼女のお兄さんに挨拶し、この会談は終了した。

「イオ…よかったな。ま、気にするなよ」

「僕も、保護者兄貴が見られておもしろかったよ。ありがとう、信用してくれて」

「いっやぁ。お前、俺が言ったそばから手ぇ出してんじゃねぇか?裏切るなよ」

伊織は未だ彼女の手を離さない。
今や恋人繋ぎに組みかえている……。
も、見せつけるなよ…。

「これから家寄る?夕食、お兄さんも。帰りは自宅まで送るよ?」

メガネをたたみながら和波さんが声をかけてくれる。
ああ、メガネは保護者っぽく落ちついて見えるようにって変装かな?

「いや、俺は。ツレが待っていますから。イオ、行ってこい」

彼女の家にお邪魔したい気持ちはあるが、伊織とのラブシーンを見せつけられるのは、もうたくさん。
それに、柊を待たせている。

「そっか、残念だな。あの堅物の前で、いいこと言うから…さすが、伊織の兄貴って思ったよ。吉坂君、これからもよろしくな」

彼女の前で、彼女の兄貴に褒められた。
俺は嬉しくて、笑顔でサヨナラができた。

帰り道、スケイン関係式を呟きだした俺は、柊に気味悪がられた。

もうほどけない結びつきの2人…。
彼女と伊織の事実を、頭から消したかったから。
まだ俺が、彼女を忘れていないことに気づいたから。

彼女に似ている侑花は、伊織に見せられない。
別の、どこかのアイドルの顔とでも差しかえたほうがいいよな……。
まったく彼女っぽくないヤツ。

いっそ、フランケンシュタインの怪物にするか……?

俺だけの彼女……。
完成して動画を撮ったら、解体できるかな……。

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