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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

「先生。僕、絶対に成績落とさないから、音楽室を使わせてください。彼女にも手は出しません」

お前、説得力ねぇっ…。
彼女もびっくりしてるぞ?

「その自信はどこからくるんだ?」

永井は"手をのけろ"とジェスチャーするが、伊織は動じない。

「まだ中学生だし、僕は彼女と一緒に演奏できれば、それで満足だから。花野だってそうだろ?」

今、"花野"って呼んだ…。

「うん」

伊織に手を握られて赤くなったまま、彼女はうなずく。

「……じゃあ、速水。成績キープしろよ?」

「当然。だから花野、傍にいてね?」

また呼んだ…。

「う…ん」

目をぱちぱちしながら花野ちゃんはうなずく。

「宮石は…キミからピアノを取りあげる気はない」

永井も彼女には優しいのな…。
この兄貴、そんなに権力あるのか?

「速水がとち狂ったら全力で逃げろ」

永井の助言に伊織が「ぷぷっ」と吹く。
おい……。

まあ、彼女が運動神経抜群の伊織から逃げられるわけねぇ……そんなことにはならないだろうけど。

「僕も気をつけて見てますから」

鋭いようで鈍い、いわゆるフツーのいい人:根岸が発言するが、永井はそっけなく。

「お前、信用性20%くらい」

「あっは。俺は61%くらいだぞ?先生」

と、情けないつらをした根岸を励ました。

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