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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

「で、こちらをお読みになってどう思われますか?」

永井はまず、彼女兄に尋ねた。

「改訂のほうだったら、別に支障はないかと思いますね。直す前は、ありえません。言葉で人を殺めることもできるのだと強く叱ったほうが、この記者のためかと思います」

おお、兄貴、いいこと言うなぁ……。

と、伊織の横で記事を見ていた彼女が「えっ」と声を漏らし、慌てて口元を押さえる。

「あ、これは出まわってないほうだから。気にしないで」

伊織がさっと新聞を隠して優しく声をかける。

てことは、お前だけ両方知ってるんだな…。
伊織、ごめん。
破り捨てておけばよかった。

「そうですね。では、吉坂は?」

「右に激しく同じ」

「くっ」と笑った根岸に冷たい視線を送った永井は、保護者兄を説きだす。

「あー。もし双方の親御さんがご存命なら、他の心配をなさったと思うのですよ」

じゃあ、花野ちゃんのご両親ももう?
と思ったところで、伊織が口を出す。

「僕の親父はご存命です」

確かにっ。

彼女兄は、にこやかに刺しだす。

「僕では心配が足りないと?」

「やはり、お兄様は親ではありませんので」

「ふっ。先生、伊織なら大丈夫ですよ。こいつのオムツは僕も換えましたもん。僕が育てた2人ですから、僕が親です」

へぇ、そうだったのか。
そんな小さな頃から2人は……。
そりゃ、俺ごときじゃ太刀打ちできねぇな。

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