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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

「あの、えと、ごめんなさいっ。あの、あのっ……」

彼女を求めた唇を噛み、うごめく甘い感情を遮断する。
早かったか…。
だけど、このままもう引きたくない。

「僕は、花野を好きだよ。…急いちゃってごめんね。でも、つきあってくれるんだよね?」

なのに彼女は、目や口を小刻みに動かすだけで。

…ならば、こうしよう。
否定される前に提出する、あざとい僕の妥協案。
それでも彼氏でいられる横路。

「そっか……いい機会だから、僕はあの記事を訂正しないよ?つきあってるふりしよ?実際は妹でかまわないから……それでも花野は嫌?」

つきあえば僕は、またキミに迫りたくなるだろう。

キスしなけりゃ僕の傍にいてくれるんだよね?
フリなら今までの関係とたいして変わらない、いいだろ?

「フリ?……う、ん」

そう言って少し不安そうに首を傾けた。

「部活のない日も一緒に帰ろうね?僕のこと、伊織って呼んで?その他は今まで通りの表向き彼氏。いいね?」

「……伊織君でもいい?」

「いいよ。彼氏と思ってくれるなら」

キミが僕を家族と思っていても、キミ以外はそうは思わない。

「ん、らじゃ」

と、あんまりよくわかっていない感じながら、ピッと敬礼した。

"らじゃ"って、これはミッションなのか?

何はともあれ、彼女と僕はつきあうことになった。
フリだけど。

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