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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

「リルフィー。あのっ、ごめんね?あんなことになって……」

階段をおりながら、彼女が謝ってくる。

「僕はむしろ喜んでるけど?」

差し向けたのは僕なんだから。

「え、だって、誤解されてるよ?」

「それで都合いいんだ」

誰もいない踊り場で足を止める。

「これで花野も、見ず知らずの男から言い寄られなくなるよ?……もしかして、兄貴たちと僕以上に好きな男いるの?」

「いないよ」

そうだろう。
予想通りの彼女の返事に僕は調子づく。

「じゃ僕を、一番好きだね?」

「そうかも」

"そうだよ"って断言してほしいのに。

「ねぇ、あきらめちゃうの?」

「あきらめるって、何を?」

それには答えず、彼女は心配そうに僕を見る。

「あの子どもの頃にした約束のこと、忘れてもいいんだよ?復讐なんてしないから安心して?」

はいぃ?復讐ぅ?
何がどうなるとそんな突拍子もない発想になるんだ?

「スコーンのカフェで好きなコ、いるって言ってたでしょ?私、リルのこと応援したいから自棄にならないで?」

自棄って何だよ?

「っ……だからっ、それが花野なの!僕は、ずっと花野を好きなんだぞ?応援するなら、僕のことを好きになってくれよっ!約束だって忘れるもんかっ!」

何で告白が喧嘩っぽくなるんだ。
最後に"このバカタレが"と言いそうになってしまった。

冷静になれ、深呼吸だ。

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