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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

依田を帰したあと、顧問は僕の書いた改訂版を見ながら言った。

「おい、キスしてないのに、速水版でもしたことになってるぞ?」

「そこは愛嬌。こんな画像つきなんだし」

最後に僕が身をかがめて、彼女に寄った写真。

さすが、新聞部だな。
絶妙な角度だ。

「他はどこがウソなんだ?宮石のセリフか?」

「酷いな。そこはあってるよ。事実じゃないって花野にバレたら意味がないだろ?」

ここまで言ったんだから、当然つきあうことになるでしょ?って一般の神経を彼女に叩きこむのが目的のひとつなんだし。

「……ふうん、こんなこと言っといて。宮石ったら、お前のことを弟だって言ったのか」

おお、先生もそう思うか。

「そうさ。あの激鈍とんちんかん、どうしたらいい?」

「そっとしといてやれよ。そのうち気づいてくれるさ」

それはいつになるんだよ?

「だといいんだけどね」

「それに、お前。呼び捨てにしてるし」

「うん。僕、キレたの」

あの屋上で、弟にされて。

この国の男は、彼女をファーストネームで呼ぶことが多いだろ?
僕はもっと甘い呼びかたをしたいけど。
周囲が納得しやすいのは、この呼びかただよね。

「そんな、お前…キレて襲いかかるなよ?」

「嫌われることはしないよ。
だけど、兄貴にはガンガン行けって言われた」

アル兄から恋愛に関する助言をいただくとは…、未だに信じられないけど。
いや、信じないほうがいいかもしれない……。
僕は、イケメンでも機械オタクでもないし。

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