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僕ら× 1st.

第8章 le journal --Ior,Ar

「してないって言ったろ?」

「うん。俺も、そう思う。宮石なら拒むはず」

依田って、いいヤツだな。
あの場でも彼女を好奇のカメラからかばってた。
勘もよさそうだし、成績も毎度上位だし。
ふうん……。

「なぜそう思うんだ?」

尋ねたよ、この先生…。

「速水は無理矢理してないと思うからです」

「この写真じゃ、嫌がってなさそうだけど?」

わからないのか!
見せかけたのは僕だけど、先生がすっかりはまるなよ。

彼女は見せつけるキスをするコじゃない。
あの場でキスが成りたつのは、僕が強引にしたときのみと依田は考えているんだ。

「だぁっ、先生!もうわかったろ?新聞部の作り話だって」

それに、もう先生の意地で聞いてるだけなんだろ?
バンド結成時にした約束を、僕が破ったんじゃないかという勘違いで。

「おい、今のはわかったぞ?どアホってお前言ったろ?」

「ふふっ、速水。知ってて写真撮らせたな?」

「俺、お前のこと好きかも」

その回転のよさ、味方にしたい。

「気が多いね」

彼はまんざらでもなさそうに笑顔でそう言った。

その横で顧問だけが「お前ら何の話してんの?」と入れないでいた。
学生時代のかたくなな純情を忘れたヤツには教えてやるもんか。

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