テキストサイズ

僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

「ど、どうしたの?」

彼が驚いて私の顔を覗く。

知らず知らずのうちに、私は泣いていた。
熱い涙が頬を伝って気づく。

"好き"とか"抱きしめたい"とかサクッと言えちゃうような関係なのに?
私のこと、何だと思ってるの?

私は姉弟にさえなれないの?
留学先で一体何があったの?
帰国してから、リルは変だよ……っ。

悲しくて悲しくて。
涙が止まらなくて。

「ごめっ……ひとりにして?」

頭のなかが混乱して、いつも以上にうまく喋れない。

「できない」

「お願、い……」

「ダメ。できない。ごめんね?僕、馴れ馴れしすぎた?髪を触られるの、嫌だった?」

「ちがっ…」

違うの。

リルが私の思ってるリルじゃない気がして……っ!

私やっぱり彼のことを、特別に好きなんだって気づいてっ……!

「違うんだったら、どうして?」

歪みだす視界に悲しそうな彼が映るけど。

「いっ……たい…のっ…………」

もう、感情が先走って、声が震えて、喉が詰まって…単語さえ出てこない。
拭っても拭っても、涙がどんどん込みあげてきて。

困らせてごめんね。

あなたは、私の弟。
かけがえのない大好きな弟……。

頼りない私にそんなこと思われて迷惑だったね。
でも、このつながりを断ちたくないの。

今だけはそう思わせて?
いつかあなたは私から離れていく…それを認めるのがとてもつらいから、ずっと家族でいさせて。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ