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僕ら× 1st.

第7章 伊織帰 --Ior,Kn,Ar

亡くなったご夫婦を火葬場まで送った僕たちがリビングに戻ると、アル兄がひとりで読書をしていた。
時刻は3時過ぎ。
僕らの行動を知っていたのかな?

「おう、星でも観に行くか?」

アル兄の言葉に、働きづくめの柊兄があからさまに嫌そうな顔をする。

「野郎でかよ?」

男4人で流れ星、そりゃちょっと……。

「じゃ、伊織と大輔。女装しろ」

「するか!」

大輔さんと僕は声をそろえて反論した。

「俺、癒されてくる。大輔、来る?アルと伊織は?」

柊兄は、うなずく大輔さんを連れて未明の街へ出掛けていった。

残された兄貴とふたりで星もなぁ……。
いや、柊兄や大輔さんがいないのにアル兄を外出させられない。

彼女は今頃起きだして、観測の準備をしてるのかな?
会いたいな……。

起きているのならば、今から連絡して合流できるだろうけど、眠っていればこんな時間に起こすわけにはいかない。

あんなあと…人肌を感じたい。
生きていると実感したい。
あ…だから柊兄は。

「イオ。一緒に寝る?」

兄貴は軽く首を振って尋ねてくる。
チラッとだけ僕を見たけど…、気にしてくれてるのか?

だからって兄貴と寝る趣味はない。
しかも!彼女に誤解されそうになったところだし。

本気じゃないんだろ?
僕のいないあいだに開眼?まさか。

でも、こないだから何かアル兄の雰囲気がおかしいんだよな……。
男が恋愛対象なのは別にいいけど、僕に焦点を当てられるのは困る。

様子を見るために、ここで寝てみるか。
もう、アル兄に組み敷かれっぱなしの僕でもないし。
このソファの下には鉄パイプが仕込んであるし……。

本を読みだした兄貴の横で、欠伸をしながらソファにかけた僕は、いつしか眠っていた。
目覚めたとき、僕の身体にはタオルケットが掛けられており、離れた床に兄貴が転がっていた。

兄貴のゲイ疑惑が薄れた結果、もうひとつの疑惑が僕のなかでシーソーのように持ちあがった。

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