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僕ら× 1st.

第1章 初期状態 --Ior,Shu

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その朝は、登校前。
天井のフックから吊りさげられた袋には、遮光のための褐色カバーがかかっている。
その下方から1本の透明な細いチューブが下がり、1滴また1滴と水滴が音もなく規則正しく落ち続ける。

アルコール類を注意深く撤去して、テーブルをキレイに拭いて、パーティを始める。

彩華(アヤカ)さん、用意はいいかな?

プレートの上にロウをたらし、熱いうちにロウソクを立てる。
1本、2本……。

「そうだ、伊織にフィアンセがいるんだって。中1で生意気だよな。
もう1人の兄弟は、飽きもせず機械相手にぶつぶつ言ってるよ。俺も、相変わらずだけどな」

並んだロウソクに火をともす(実際は火気厳禁!)。
明るい炎の波が、彼女の顔を揺れながら照らす。

今日は誕生日だね。

「桜のレアチーズケーキ、買ってきたよ。ロウソクは22本。穴があいちゃうからケーキには刺さないね」

グラスに泡立つ液体を注いで……。
ハッピーバースデー。

「彩華さん、大好きだよ」

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