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僕ら× 1st.

第6章 卒業まで --Ar,Mkt

~小津茉琴side~

春風そよぐ校庭に、たった今、式を終えた3年生たちが集まってくる。
胸に赤いリボンをつけて。

今日は先パイの卒業の日。

今まで好きになった人は何人かいたけど、先パイは次元が違う。

憧れて憧れて、姿を見かけるだけで目の下が熱くなって、心が騒ぐ。
目があうだけで、頭が吹っとびそうな破壊力。
昨年の文化祭で私に笑いかけてくれたときは、心停止するかと思った。

彼氏になってほしいなんて夢々思わない。
接近したら、私が私でいられなくなる。
我を見失って、とんでもない醜態を晒してしまうだろう。

だから、遠くから見ているのが一番。

それに、私の所属するバレー部の可愛いマネージャーが先パイに告白したら、すっごく冷たくあしらわれたとか聞いたし。
あの端整な顔立ちの下は、もう恋心もぶっ飛ぶくらい極悪とか…。

本当なのかな?
それって、フラレたから負けおしみなんじゃないの?
とは思ったけど、私のクラスメイトで先パイとは親戚関係にあるチビ速水からも"女に興味なし"と聞いていたから、自分で実践してみる気には到底なれなかった。

そんな先パイなのに、私は気づいてしまったんだ。
放課後の音楽室を覗いていることに。

先パイが来るのは決まった曜日で、壁にもたれて本を読んだり、うたた寝したり。
あそこは陽当たりがいいからかと、初めは思った。

体育祭の準備でバタバタしていた日、1年のフロアに先パイを見た。
仲のよい柊先パイと廊下の窓際で、隣の教室を眺めていた。

体育祭実行委員の偵察かと思ったんだけど、その場から動かない。
一緒にいた柊先パイはまわりを見渡すのに対し、先パイはその一角に釘付けだった。

彼女を見て、優しく微笑む先パイ。
彼女に話しかける男子に鋭い視線を向ける先パイ。

先パイが週2回音楽室前に現れるわけが、ぎゅっと私のなかに飛びこんできた。

そんなっ……。
先パイが、片想いだなんて……!

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