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僕ら× 1st.

第5章 伊織の婚約者 --Shu

先ほどの情報だけではラチがあかないので、とりあえず俺は話題を戻すことにした。

でないと、まさかの援交?なんて口走りでもしたら、マジギレのこいつに首絞められるからな…。

「さっきの映画の話だけど、いっそのこと一緒に観れば?」

「そんな、いきなり家に誘えるかよ」

「だな。曲名すら聞けねぇんだし」

「…俺が喋ったら、泣かせちまうかもしれねぇだろ?」

もう、泣かせて嫌われて、あきらめたらどうだろう?

「気楽にいけよ。むこうはお前のこと、ナンパから助けてくれたマヌケな先パイと思ってるんだろ?好印象じゃねぇか」

「マヌケな先パイって…おかしいだろ?それ……。それにもう、忘れてるよ…最近は名前で呼んでもらってねぇ」

ああ、顔と名前覚えるの苦手とか言ってたな。
気にするあたり、可愛いとこあるじゃね?
だいたいが、お前、彼女とそんな喋ってねぇじゃねぇか。

「お前、わりと有名人だし知ってんじゃね?」

「有名って何で?」

「喧嘩上等、女泣かせの眉目秀麗ダメ男、で有名」

「…俺が悩んでんのに、塩振りかけんな」

俺の板ばさみ状態より深刻な悩みなんて、そりゃもう世界規模だろ。

帰宅したあと、その映画ディスクを探しだして、夕食を食べながら見た。

……この主人公たち、アルと伊織に、似てねぇよな?
こんなラストは実際ならぜったいに嫌だぞ?
これは、状況を知ってしまったからこその感想だろうな。

まあ、俺がいるから大丈夫。
キャスト俺がいなかったからこうなっちゃったんだなぁと、ひとり納得する。

自転車デートのシーンで、探し求めていた音楽を見つけたアルは、お気楽にも歌詞を調べはじめた。

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