眠れない夜を抱いて
第4章 瀬戸際の優しさ
お金を払おうとしたら、いつのまにか相葉さんが置いていったらしい
いつもなら “ラッキー“ で済ませるけど、今日はそんな気持ちにはならなかった
「相葉くん見つけたら、これ返しといて」
“貰いすぎだから“ と茶封筒にお金を入れて大野さんが俺に差し出すから
その中に、請求額の半分もついでに突っ込んで
「ご馳走さま。またね」
相葉さんが向かっただろう方向に走り出した
駅までは1本道だから、着く前に見つかれば見失う事はない
相葉さんも飲んでるし、走る事はないだろうけど
むしろ最初につい走ってしまった俺の方が、一気にそのおかげで酔いが回ってしてしまった
「…あれ」
通り見の左側にある小さな児童公園の中
ベンチに座る人影に目が止まった
俺と同じ、幾つかの紙袋が横に置いてある
言わずもかな、それは相葉さんで
思ったより早く、簡単に見つけられた事に安堵した
「相葉さん」
迷う事なく、彼の方に足を進める
「急に帰るから、どうしたのかと思った」
俯いていた相葉さんが顔を上げて、俺に視線を合わせた瞬間
…俺はその強い視線に動けなくなってしまった
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