眠れない夜を抱いて
第4章 瀬戸際の優しさ
笑って話してたと思ってた相葉さんが突然帰ってしまった
怒ってる訳ではなさそうだけど、表情は少し曇ってた気はする
それが何故だか分からなくて、大野さんに聞いてみるけど
大野さんも意味深に笑うだけで何も言ってはくれなくて
俺、何か変な事言ったかな
心当たりはないけれど、何かしらしてしまった事は間違いないと思う
「…追い掛けた方がいいかな」
「俺にはどっちとも言えねぇよ」
「何でさ」
「それは自分で考えろ」
分からないから聞いてるのに
大野さんがそう言う時は、もう俺が何言っても教えてはくれないのはいつもの事だ
だけどこのままってのもモヤモヤするし
だからと言って “何で帰っちゃったの“ とも何となく聞きにくい
今ならまだ、帰ったばかりだし
…時間が経ってからよりは気まずくはならないかも知れない
「大野さん、俺も帰る」
立ち上がってそう伝えた俺に、ちらりと上目遣いを向けた大野さんが小さく呟いたけれど
気持ちが急いていた俺には、それは聞こえていなかった
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