無料で楽しめるちょっと大人のケータイ小説

これだけ探して

見つからないものを



さすがに運良く見つかるなどと

私も思ってはいなかったかも知れません




けれど・・・本当に大切なもの




自分の目で・・・確かめて




納得の行くまで


やれるだけの事をやり尽くすまで





それだけしないと


諦めもつかないというもの・・・








私は…諦めずに足を踏み入れました




『ﾊｧ…ﾊｧ…・・・ﾊｧ…』




脚の疲労は

とっくにピークも過ぎていました






ﾘｰﾝｺﾞｰﾝ・・・ﾘｰﾝ・・・ｺﾞｰﾝ




例の結婚式場

教会の鐘の音がして

桜並木が見えて来ます



〃もうすぐ・・・あとちょっと〃





うすピンク色の

可愛くて綺麗な桜の花が

満開に咲き誇り




舞い散りながらも

なお美しく



暖かい春の匂いをのせて

散り行く様




それは・・・最高に美しく

絶景とも言える

素晴らしい景色です






けれど

今朝、それを見た私とは

うって変わって

そんなものに浸る余裕のない私




少し油断すれば

転んでしまうような

余裕のない足取り



私は…急いで

並木道を抜けようとしていました











ザァーーーーーーーー・・・











突然

一筋の

暖かく・・・強い風が吹いて


辺り一面のシャワーのような

桜の花びらを一気に舞い上げました





『っ・・・う』


目にゴミが入る…なんて

咄嗟に警戒するように

私は無意識に手で視界を遮りました





そして・・・











・・・・・・フワ






『・・・』


〃なに・・・？〃








気のせいでしょうか？





舞い上がった…暖かな風に混じって


やわらかな・・・優しい匂いがしたのです





桜の花の匂い？




いいえ・・・違います





物の匂いではありません




何？と説明を求められると
説明も出来ない



私にしかわからない




・・・〃懐かしい匂い〃だったのです。







目を開けた私は…シパシパと

目をこらして顔を上げます








すると・・・そこには









ひとつ・・・人影がありました