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エレベーターにて……

第1章 夢、風鈴、迷子は、終わったって!?

「これを見てくれた、わしのふおろわぁが、心配して助けに来てくれるかもしれん」

 それを聞いた由留衣、突然、太丸の携帯電話を奪い取った。

 急な行動に、太丸は目を丸くする。

「うおぃ、なにをするんじゃっ!!」

「なにをやってるんですかっ!! 電話があるなら助けを呼べばいいでしょっ!!」

 その通りだ。

 だが、太丸はやってみたかった。

 SNSという、今の時代の流れに乗りたかった。

 フォロワーなんてついていないが、「フォロワー」と口に出して言ってみたかったのだ。

 ナウを使いたかったのだ。それらが出来るんだと言うことを、かっこつけて由留衣に見せたかった。

 ただ、使うタイミングが、悪かっただけだ。

 由留衣は太丸の携帯電話を使って、110番にかけていた。

「はい、そうです。○○町の……はい、コスタリカビルの真裏の落花ビルです」

「はっ!?」と太丸が声を上げる。

「はい……はい、お願いいたします」と由留衣は電話を切って、太丸に渡す。

 太丸は電話を受けとると、なぜか一瞬匂いを嗅いだあと、懐にしまった。

「ちょっと、下賀さん……あの、ここはコスタリカビルじゃないんですか?」

「なにを言ってるんですか? ここは、落花ビルですよ。コスタリカは後ろのビルです」

「えっ!? らっかびる!?」

「て、言うか、盆納さん、このビルに、なにしにいらっしゃったんですか?」

 由留衣に聞かれ、太丸はチラシを渡した。

「えっと……これ、MTTからもらったチラシですね。ネットもSNSもすぐに使える、携帯電話の使い方講座……て、使ってましたよね!?」 

「いや、もっと使えるようになりたいんじゃよ。今の若い者が、スイスイと扱うように」

「それなら、こんなガラケータイプのらくらくホンじゃなくて、スマホにしないと……でも、もうすぐ助けが来ますから。まだ間に合いますよ」

「あ、そうでしたな……いやいや、本当にありがとうございます」

 太丸が両手を差し出すと、由留衣は後ろに下がる。

「ちょっと待って、近寄らないでください」

「えっ!?」

 太丸は動きを止めたあと、なぜか体の部分部分を匂いはじめた。

「いや、別に加齢臭を気にして言ったわけじゃないです……ただ、おたくは、男性じゃないですか。そう軽々しく近寄られても……」

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